原爆の日に神戸市立博物館へ「山本二三展」を見に行ってきた。山本二三は「天空の城ラピュタ」、「火垂るの墓」、「時をかける少女」など数々の作品の美術監督をつとめた、アニメーション美術監督の第一人者である。特にボリューム感のある雲の描写が秀逸で、ファンの間で「二三雲」と呼ばれている。

 展覧会のパンフレットを飾る「時をかける少女」の背景画にも「二三雲」がもこもこと浮かんでいる。空の下で穏やかな街並みが遠くまで続いている。じっと見ていると気分が落ち着く。

 66年前に広島に原爆が落とされた日も、天気は抜けるような青空だったらしい。しかし、一瞬にして平穏な日常が奪われ、無数の命が跡形もなく消えた。涙で滲んだ夏空は赤々と燃えていた。いかなる理由があろうと人間の頭上にあんな恐ろしい物を落としてはいけない。決して風化させてはならぬ記憶なのに、最近では地元の子供ですら原爆投下の日時が正確に答えられないという報道があった。

 原爆ドームの絵を描き続ける老人の報道も深く印象に残っている。27年かけて描いた絵の数はなんと3,000枚にも達している。一枚一枚の絵に「核との決別」の思いが込められているという。老人の絵に雲は描かれているのだろうか。描かれていたとしたらどんな形をしているのだろうか。ウロコ雲、ひつじ雲、それとも「二三雲」のような入道雲?何はともあれ、あの恐ろしいキノコ雲が二度と空に出現しないように。

 

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